M&Aの手法

M&Aの手法には株式譲受(株式譲渡)・新株引受・株式交換、事業譲渡、合併、会社分割などの様々な手法があり、適宜、適切なストラクチャーを作って、お客様に提案していきます。

M&A(資本の移動を伴う提携)
合併・買収(狭義のM&A)
株式の持ち合い
マイノリティ出資(経営権をとらない株式取得)
合弁企業の設立
合併
吸収合併
新設合併
買収
株式取得
株式譲渡(TOB含む)
新株引受(第3者割当増資、新株予約権割当など)
株式交換
株式移転(持ち株会社設立)
事業譲渡
一部譲渡
全部譲渡
会社分割
新設分割
分割型分割(人的分割) ※法人税法上での分類のみ
分割型分割(人的分割) ※法人税法上での分類のみ
吸収分割
分社型分割(物的分割)
分割型分割(人的分割) ※法人税法上での分類のみ

移転資産に対する課税

法人税法においては、法人が有する資産を移転した場合には、時価による譲渡があったものとして、譲渡損益を認識するのが原則であり、この点においては、M&Aの各手法により、資産を移転する場合でも例外ではありません。
ただし、M&Aの各種法により、資産を移転する前後で、経済実態に実質的な変更がないと認められる場合等には、従前の課税関係を継続させることが適当であると考えて、一定の要件を満たす場合に限り、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることができます。

株主に対する課税関係

個人株主が非上場株式を売却して収入を得た場合、申告分離課税により譲渡益に対し20%(国税15%、地方税5%)の譲渡所得税が発生します。その他のM&Aの手法については、分割型分割や合併があった場合、分割法人や被合併法人の株主において、旧株式の譲渡損益を認識するのが原則ですが、株式の投資が継続していると認められる場合には、移転資産に対する課税と同様、一定の要件を満たす場合に限り、株式の譲渡損益の計上を繰り延べることができます。

買収した欠損法人等を利用する租税回避について

昔は、節税対策で欠損金のある会社を買収して、そこに事業を移管して、課税所得の圧縮を図るといったパターンが多く見受けられましたが、今は条件が厳しくなっています。平成18年度の税制改正により、買収した欠損法人を使用して租税回避行為を行うことを防止するため、「特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越の不適用」(法人税法57の2)
「特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額」(法人税法60の3)
の規定が新たに設けられました。

欠損等法人
特定の株主によって50%を超える株式等を直接または間接に保有される関係(「特定支配関係」)となった内国法人で、欠損金額または評価損資産を有するもの

この欠損等法人が、その特定支配関係を有することとなった日(「特定支配日」)以後5年を経過した日の前日までに次に掲げる事由のいずれかに該当する場合は、その該当する日の属する事業年度(「適用事業年度」)前の各事業年度において生じた欠損金額については、青色欠損金の繰越控除制度が適用になりません(法人税法57条の2)。

  1. 欠損等法人が特定支配日の直前に事業を営んでいない場合に、その特定支配日以後に事業を開始すること。
  2. 特定支配日の直前に営む旧事業のすべてを廃止する場合に、旧事業の規模のおおむね5倍を超える事業資金を受け入れること。
  3. 欠損等法人と特定支配関係を有することとなった者、またはその関連者が当該欠損等法人の特定債権を他者から取得している場合に、欠損等法人が特定支配日前の事業の規模のおおむね5倍を超える事業資金を受け入れること。
  4. 上述の3つの場合において、欠損等法人が自己を被合併法人とする適格合併を行うこと、または、当該欠損等法人(完全支配関係がある場合に限る)の残余財産が確定すること。
  5. 欠損等法人が特定支配日の直前に事業を営んでいない場合に、その特定支配日以後に事業を開始すること。

このような他社を買収することによる租税回避行為は、被買収会社の資産の含み損を利用することによっても可能となることから、被買収会社の含み損を実現した場合に関しても、その損金算入について制限が設けられています。
すなわち、上述の適用事業年度開始の日から3年を経過する日と、特定支配日から5年を経過する日のいずれか早い日までの期間において生ずる、特定資産の譲渡などの特定事由による欠損等法人の損失の額は、その欠損等法人の損金の額に算入しないこととされています(法人税法60条の3)。
また、法人税法132条では、同族会社等の法人税につき、法人税の負担を不当に減少させることとなると認められるとき、また、組織再編により資産または負債の移転を行った法人(移転法人)、資産または負債の移転を受けた法人(取得法人)、移転法人もしくは取得法人の株主等である法人の法人税の負担を不当に減少させることになると認められる時は、その行為または計算にかかわらず、その法人の法人税の課税標準、欠損金額、法人税額を計算することができると規定されています。

各手法の比較

  合併 現物出資 現物分配 株式交換・株式移転 事業譲渡 会社分割 事後設立
取引の対象 被合併法人 現物出資法人の個別資産 または事業 現物分配法人の金銭以外の個別資産 完全子会社となる法人の株式等 事業譲渡法人の事業 分割法人の事業 事後設立法人の個別資産または事業
取引の対価 合併法人の
株式等
被現物出資法人の株式等 なし 完全親会社と なる会社の株式等 金銭等 分割承継法人の株主等 金銭等
対価受領者 被合併法人の
株主等
現物出資法人 なし 完全子会社となる会社の株主等 事業譲渡法人 分割法人 事後設立法人
権利義務の移転 包括承継 特定承継 特定承継 なし 特定承継 定めた範囲で 包括承継 特定承継
債権者
保護手続き
あり なし
個別承認
なし
個別承認
なし なし
個別承認
あり
重畳的債務引き受けの場合は 原則不要
なし
個別承認
株主総会の
承認
(原則)
必要 現物出資法人が重要な資産等の譲渡の場合:必要
被現物出資法人が事業全部譲受の場合:必要
必要 必要 事業譲渡法人が重要な資産等の譲渡の場合:必要
被事業譲渡法人が事業全部譲受の場合:必要
必要 事後設立法人が重要な資産等の譲渡の場合:必要
被事後設立法人が事業全部譲受の場合:必要
簡易承認手続き あり あり なし あり あり あり あり
反対株主の買取請求 あり あり なし (金銭分配 請求権付与) あり あり あり あり
検査役調査 なし なし あり なし なし なし なし
留保利益の
引き継ぎ
可能 不可 あり なし 不可 不可 不可
移転資産の
課税
原則:課税
特例:非課税
原則:課税
特例:非課税
原則:課税
特例:非課税
課税 原則:課税
特例:非課税
原則:課税
特例:非課税

※本ページは2015年1月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。
また、概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。